科学哲学の冒険:戸田山 和久

科学哲学を専門とする著者が,基礎から話題のトピックスまで網羅
した科学哲学の入門書の決定版.

みんなが感じる素朴な疑問を哲学的に考え,対話形式で科学の意義
とさらなる可能性について説いている.

ヒュームやポパーを読んでみたいと思い,その前に入門書を探して
いたときに出会った本である.

本書によると,科学の真理は社会的構成物だとする相対主義に対し,
世界は科学によって正確に捉えられるという直観(科学的実在論)を
著者は擁護している.この立場は一般的な常識に合致するが,科学
哲学の世界では必ずしも常識的な立場でもないし強い立場でもない.
この立場を擁護しようとするとけっこうたいへんだそうだ.

科学で出てくる方法論や用語を理解するのに最適な入門書であった.

地球温暖化の予測は「正しい」か?:江守 正多

コンピュータ・シュミレーションによる地球温暖化の将来予測を専
門とする著者が,気候モデルの信頼度や不確実性を解説した本.

本書は地球温暖化について適切に知るための判断材料を提供してい
る.より適切に温暖化予測を信じたり,あるいはより適切
に温暖化予測を批判したりできる知識を与えようとできるだけ価値
中立な立場で書かれている.

まえがきにあるように,
「比較的難しいのは,対象の本質を理解したうえで,どの部分をど
のように信じていいか判断することです.」

著者は,読者の温暖化問題に対する判断に役立つ材料提供に徹している.
本書を読めば地球温暖化の科学的データを読む力が付くだろう.

ウェブ進化論:梅田 望夫

シリコンバレー在住でIT分野の知的リーダーとして若い世代から圧
倒的支持を集める著者がウェブ時代をどう生きるかを述べた本.

ブログ,ロングテール,Web2.0などの現象を読み解きながら,イン
ターネットの変化の本質をとらえ,その変化に創造的・積極的に対
処する方法が書かれている.

本書の出版は2006年である.今なぜこの本を再度読もうとしたのか.
それは最近流行りのソーシャルネットワークが言及されているか
確認するためであった.

「第5章 オープンソース現象とマス・コレボレーション」の「ソーシャ
ル・ネットワーキングと人々の評価という「全体」」という節に
mixiとGREEが出てくる.Web2.0時代のサービス構造の例として出て
くる.この節において著者は「個」から「全体」への価値創出につ
いて思考実験をしている.

6次の隔たりというアイデアを基にソーシャルネットワークが「巨大
な人間関係マップ」を構築する過程にあると考えている.

それを巨大な「人間検索エンジン」と見立て,そこに知りたいと思
うことを入力すれば,その答えが出力される仕組みへと発展する可
能性を内在していると述べている.

当時は今より,Googleの影響が強かったはずでどうしても検索エン
ジンのような使い方から発想が転換していない.現状ソーシャルネ
ットワークの使い方をみてみるとメールや掲示板のようなコミュニ
ケーションツールとしてつかわれているようだ.

Facebookのいいねボタンに代表されるソーシャルボタンよって口コ
ミが発生し,人の行動が不特定多数のネットの情報でなく知人のお
勧めによって決定される.これは,ネット出現以前の人の行動に近
づいているといえる.

前々から必要な情報をネットから探し出せない人がいるといわれて
いる.検索エンジンの検索窓にどんなキーワードを入力すればわか
らないからだろう.しかし,ソーシャルネットワークでは知人から
自分の知りたい情報を教えてもらえる可能性が高い.

「個」と「全体」ではなく,「個」と「個」の結びつきがソーシャ
ルネットワークの発展の鍵を握っているであろう.

Facebook仕事術:樺沢 紫苑

日本語Facebookページランキング「著者」カテゴリ第1位
である著者が書いたFacebook本の決定版.

この本は,「Facebookを使いこなすためのコンセプト」,
「Facebookとは何か?」ということを本質的に理解してもら
おうという意図で書かれている.

(1)Facebookページは前から知っていたが,個人ページとどう違うのか
わからないままでいた.

(2)Facebookページはビジネスマンや本の著者など有名人が使うものと
思っており,普通の人は個人ページで十分と考えていた.

上記(1),(2)のように私も考えていた.さらにTwitterやGoogle+は自分
の投稿が不特定多数の人に読んでもらえるが,Facebookは友達間だけで
影響範囲が限定されているような感じがしていた.また,情報を受けとる
側としても,情報量が限られているような感じがしていた.特に,Google+
が出てからはその思いが強くなった.

しかし,この本を読んで考えが変わった.

この本は,ビジネス寄りの内容であるがFacebookページを使って情
報発信者となる方法が書かれている.しかし,これはもったいない
と思う.自分のブログを持っていたらブログとFacebookページを連
動させて,ブログへ誘導することができる.また,Facebookページ
に記事をアップしたら,ブログ同様Twitterにツイートしてファン
を獲得することができる.いろいろFacebookページは使えるようで
楽しそうだ.

著者が,最後に
「最後までお読みいただきありがとうございました.ここまで読み
進めたあなたは,あることに気付いたかもしれません.この本は
Facebookの本ではなかった,ということに.」
と述べている.

確かに,Facebookの操作方法ではなく「情報発信」と「交流」に的
をしぼって書かれている.コンテンツを書く力,伝える力,相手を
思いやる気遣いなど総合的なコニュニケーション力について書かれ
ていた.本当にお勧めの本です.

エネルギーと私たちの社会:ヨアン・S. ノルゴー他

エネルギーや環境問題に焦点を当て、世界の発展のあり方について
議論を喚起するために1982年にデンマークで出版された本.

これから世界が持続可能な社会になっていくために、どのような解決策
が有効であるか提示している.

本書では高エネルギー社会と低エネルギー社会をめぐる根本的な選択を
述べている.高エネルギー社会とは国内総生産(GDP)の成長のために物質
的な生産と消費が拡大していく社会を指す.これに対し,低エネルギー社会
とは,人々が満ち足り,社会的公正や人々との交際,ゆとりなどに価値を見
いだす社会を言う.

確かに,デンマークと日本では社会風土や政治経済状況が違うと考
える人がいるかもしれない.また,その後の技術革新,電力行政や地球
温暖化問題への取り組みなどによって,30年前のエネルギー状況と
は異なるという人もいるかもしれない.

しかし,本書は1979年の第二次オイルショックの時に原子力計画公
表したデンマーク政府に対して,市民団体が用意した対抗策のベー
スになった.その内容は省エネルギーに重点を置いたものだった.
成熟社会に向かうための方策を明確に提示している.つぎに,エネ
ルギー政策を「需要側」から組み立てる見方を提示している.これ
により,これまで「供給側」から政策を組み立ててきた日本のエネ
ルギー政策の欠陥が分かる.最後に,私たち自身が持続可能な社会
に向けて自分たちの暮らしや価値観を見つめ直し社会に働き掛けて
いくとことが大事であると述べている.

エネルギー・環境問題の構造は、日本を含む先進国では現在でも概
ね変わっていない.30年も前にデンマークで書かれた本書を読む意義
は少しも薄れていないであろう.

本書は,現在の日本社会の目標について,考えたり再考するきっか
けになった.やはり,こまかいデータ分析も大事であるが歴史の転
換点にはこのような大きな流れこそ議論する価値があると感じた.

大人のための近現代史19世紀編:三谷 博他

日本,朝鮮,中国の歴史の専門家が,19世紀の東アジアの出来事や
歴史的関係について書いた本.

日本,朝鮮,清を中心に記述してあり,それに加えてロシア,イギ
リス,アメリカなど西洋諸国の動きが述べられている.

日本人の歴史観と中国人,韓国人の歴史観の違いに触れることがで
きる.共通の歴史認識に立つことは無理でも相手の視点を理解し対
話をすすめていくうえで有益な内容である.自分なりの判断の根拠
を得ることができるだろう.

なかなか大人になって,歴史の通史を扱った本を手に取ることはな
かったので,知人から尋ねられどの本がよいか迷ったすえにこの本を
読んでみた.東大の総合文化研究科の方々がまとめられているので
いわゆる通史であるが,それとは異なった解釈もコメントに書かれて
いる.知識の相対化に有益である.

高校の世界史では,この時代の日本が近隣諸国とどのような関係を
結んだかの記述が薄いが,この本はそれを補ってくれる.よい本で
ある.一読を勧める.

こころの情報学:西垣 通

理系の知と文系の知を横断する情報学の構築をめざす著者
が,まったく新しい心の見方を提示する刺激的な本.

「ヒトの心」を論じるために,「機械で心はつくれるのか」と「動
物に心はあるのか」という二つの問題を設定している.それらの問
題を論じるなかで,人工知能工学,オートポイエーシス理論,動物
行動学,アフォーダンス理論,現象学,社会学,言語学,記号学な
どを論じている.非常に話題が多岐にわたっている.そのため,内
容を要約しづらい.

興味深かったのが,人工知能研究者のウィノグラードがテクスト解
釈について哲学的議論に言及している点.西洋には,「解釈学」と
いう伝統があり,それは神話などのテクストをいかに解釈し,いか
なる意味を見いだすかという学問である.彼は,解釈者とテクストと
の相互作用によって<意味>が立ちあらわれるという立場に共感して
いる.これは,哲学者ガダマーの立場である.

このように,理系の知と文系の知を繋げる形で文章も書かれてお
り,人によってはとまどったり読みづらく感じるかもしれない.
逆に参考文献欄が充実しているのでこの本を起点にして,それらの本を
読んでみるのもいいであろう.

原発列島を行く:鎌田 慧

フリーのルポライターである著者が,日本のエネルギー行政の矛盾
を書いたドキュメント.

原発が,いかに過疎地の人々に犠牲を強いてきたか著者が全国の原
発を回り,金にその声を押しつぶされてしまった人々の苦悩やそれ
でも闘う人たちの姿を抑制された筆致で書いている.

筆者が,
「いまのわたしの最大の関心事は,大事故が発生する前に,日本が
原発からの撤退を完了しているかどうか.つまり,すべての原発が
休止するまでに,大事故に遭わないですむかどうかである.大事故
が発生してから,やはり原発はやめよう.というのでは,あたかも
二度も原爆を落とされてから,ようやく敗戦を認めたのとおなじ最
悪の選択である.」
と書いている.

福島原発事故が発生し,その最悪の選択を日本はしてしまった.

この本には,原発そのものの危険ではなく国や電力会社が金だけでな
くあらゆる策略と恫喝を弄して土地を買い占め,有力者を買収し住
民の反対運動を押さえ込んでいったかが克明に書かれている.ばら
まき行政の露骨で退廃したやり方がこれでもか,というほど書かれ
ていて驚いた.けっしてヒステリックな書き方はしていない.逆に
そのため,地域住民の声なき声に筆者が耳をそばだてて書いている
のが読んでいて伝わってくる.

10年前に書かれた本だが,今こそ読むべき本である.

プログラミング Ruby 1.9 言語編 ライブラリ編:Dave Thomas

言語編がチュートリアルでライブラリ編がリファレンスとなってい
る2分冊です.

海外ではピッケル本として知られている”Programming Ruby 1.9
The Pragmatic Programmers’ Guide”の翻訳です.

組込みのクラス,モジュール,メソッドがすべてドキュメント化さ
れています.

Perlでのプログラミング経験があったのですが,読み飛ばさずに
言語編の第一部 Rubyの基礎から読み進めました.Rubyという言語がど
ういう言語なのかよくわかりました.あとはライブラリ編を参照し
ながらプログラミングしています.必要に応じて第三部のRubyの文
法と動作の仕組みも読んでいます.内容は少し高度です.
Rubyでプログラミングするすべての人におすすめです.

[書評] 入門Android 2プログラミング : Google Androidの開発者が知っておくべき基礎知識:Mark Murphy

入門と書名にありますが,前提知識としてJavaとXMLの知識を求め
られます.また,開発ツールのインストールの解説は一切ないので
自分でアンドロイドのオフィシャルサイトを参照しながらインストー
ルする必要があります.

しかし,そのため本書の内容は特定のGUI開発環境のツールに依存
していないので,VimやEmacsなどのエディタで開発されている方に
お勧めです.また,サンプルのソースコードが秀逸で非常に勉強に
なります.すべてダウンロードできます.Androidのバージョンが
上っても使える貴重な本だと思います.